旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「確かに。すごく温かくて気持ちよかった」
「胸に寄りかかったんなら、そりゃあもう温かかったでしょ」

 あのときの状況を思いだして顔が火照りそうになる。確かにとても温かかったと思う。だが、あのときは痛みに気を取られてもいたし、普段の感覚よりはずっと鈍かったはずだ。

「……まあ、そうだけど。でも、痛みでそれどころじゃないのもあったから、そこまでしっかりは味わえてないよ……」
「あー、だから、それを今したくなってるわけね」
「……うん」

 その通りだ。もう一度あのときのぬくもりを味わってみたいのだ。

「じゃあ、同じことしてもらえばいいじゃん。一回やってもらったんなら説明しやすいでしょ」
「うーん、まあ?」
「さっさと素直になりなよ。素直に言われたほうが旦那さんも嬉しいと思うよ?」

 美咲は聡一から言われたことを思いだした。彼は真っ直ぐに伝えてくれるのが嬉しいと言っていた。美咲が素直に甘えればもっと喜んでくれるのかもしれない。

「……そうかも。この前それっぽいこと言われた」
「ほらね」
「……うん。頑張って素直に言ってみようかな……恥ずかしいけど」

 それはささやかな決意表明だったのかもしれない。千佳と別れたあともずっとそのことについて美咲は考えていた。

 さすがにすぐに行動を起こす勇気はなくて、数日は何もしなかったのだが、その間もずっと素直に言ってみるべきなんじゃないかと思っていた。
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