敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「それもあるけど、岩切製紙について聞きたいなと思って。私も長くお世話になったところだから」

料理を注文し待つ間、神野は現状について話してくれた。猪川グループとの急な関係破綻で、多くの損失が出たこと。その企画や仕事に関わっていた人たちが要さんに不満を持っていること。

「特に大きな案件では、合資だったリゾートホテルの計画が宙に浮いている。別のパートナーを見つけないと、岩切製紙は巨額の赤字を抱えることになる。参ったよ」
「でも、去年は政府関連のイベントの主幹も務めたし、猪川グループの仕事がなくなっても企業全体が傾くわけではないでしょう」
「負債がふくらめば株主は黙っていない。そうすれば、他の企業との関係も安心とは言えなくなるだろ。あとは、岩切社長の女遊びが激しくて、婚約破棄になったって噂があるんだよ。そのしりぬぐいを会社全体でするなんて、納得できないよなあ」

私は唇をぎゅっとかみしめた。要さんは確かに麻里佳さんと婚約解消をした。結果はそうだ。
だけどふたりの間には、私や蔵多さんをはじめ、多くの人たちの個人の気持ちが入り乱れたのだ。
決して、軽々しくこんな事態を招いたわけではない。
ましてや女遊びなんてするはずがない。

だけど、他人から見れば要さんは岩切製紙を傾けた社長に見えているのだ。
要さんは言い訳などしないだろうし、それがまた歯がゆい。
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