敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「それにしても、高垣が結婚か。相手はどんな人?」

テーブルに届いたパスタを食べながら、私はもやつく気持ちと戦い、言葉を選ぶ。結局適当な言葉が見当たらず苦笑いするばかりだ。それが神野の知りたい返事ではないのは明らかで、彼は片方の眉をしかめて笑った。

「あーあ、誰かにさらわれるくらいなら、さっさと俺が告白しておけばよかった」
「え?」
「気づかなかった? 俺、ずっと高垣のことが好きだったんだよ。こんなふうに赤ん坊とのツーショットで再会することになるんだったらさ、あの頃もっと強引にいけばよかったって思うよ」

知らなかった。神野が私のことを好きだったなんて。
あの頃、神野にアプローチされていたら、私は要さんへの恋を諦めていただろうか。神野と交際していただろうか。
いや、きっと無理だっただろう。思いのほか私の恋は強固で、その想いが私をこの未来に連れてきてしまったのだ。

「神野、私ね、旦那さんのことが好きなんだ。ずっと好きだった人なんだ」
「なんだよ、のろけかよ」
「うん。だから、旦那さんを信じるよ。今日はありがとうね」

私の言葉に神野は首をかしげた。よくわからないというように。

カランと店のドアが開き、ベルが鳴った。客の足音が近づき、見上げるとそこには要さんがいた。
私たちのテーブルにまっすぐ歩み寄ってきたようだ。
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