敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「都子、俺がおまえに恋して、もう四年が経った。あの頃から俺はいつか猪川グループと縁が切れることを想定して動いていた」

要さんは大地をゆすりながら穏やかに続ける。

「もちろん、どうしても手がけなければならない計画はあった。それも条件をつけて、途中で変更が生じたときには、岩切製紙も猪川グループもなるべく損をしないように舵取りしてきたつもりだ。すべての損害は防げなかったし、それに伴い社員を不安にさせたのは申し訳なく思っている」
「合資のホテル計画のことも聞きました。宙に浮いていて、駄目になれば、大きな赤字だと」
「ああ、その件については一昨日ようやく新しいパートナーが見つかったよ。まだ営業現場の人間しか知らないから、総務の神野が知らなくても仕方ない」

少し笑ってから、彼は言った。

「俺は岩切製紙の社長だ。家族も社員も守る。そのためには全力を尽くすし、結果をだすことで必ずみんなに納得してもらえると思っている」

要さんは平和そのものといった様子だ。
それはここ最近ずっと私と大地の前で見せてきたくつろいだ表情で、彼が私たちの前で取り繕っていたわけではないのがわかった。
この人は私に隠していたのでも、無理をしていたのでもない。
ごく自然に努力を重ね、道を切り開いていただけなのだ。
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