敏腕社長との秘密の身ごもり一夜～身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました～

「そうと決まれば急ごう。早く食べたい」
「わかりました。って、要さん、スマホを忘れてますよ」
「本当だ」

要さんの運転で夜の都内を行く。
街の明かりが流れ、車のランプが規則的に並ぶ。遠く響くクラクション、ビル風ではためくしまい忘れののぼり。
冷えてきた初冬の空には星が見えるだろうけれど、東京のど真ん中ではそれほど多くは見えない。その代わり、東京タワーは今日も夜を照らしてくれる。安心感のある大きなタワー。

要さんの綺麗な横顔は静かで、いつまでも見ていたいと思う。このほんのひと時が好きだ。
きっと、私は一生のうちで何度も要さんの運転で夜の都内を走ったことを思い出す

（この一瞬がずっと続けばいいのに）

そんなロマンチックなことはすぐに打ち消して、私は夜を記憶に焼き付けようと思った。懐かしく思い出せるように。