敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
それはきっと、一夜の過ちに付き合ってほしいという意味だ。あと腐れなく、男女の関係を持ってほしいという意味。
彼の立場で口の堅い女性は私程度しか選べない。

ずるい人だ。
だけど、私にとっては大好きな人。そして、彼の誘いに乗ろうとしている私も充分ずるい。

「わかりました。一晩、おそばにいます」

声は思いのほかはっきりと出た。心臓がとくとくと鳴っているのが、感じられる。

ホテルの部屋は広々としたセミスイートだった。彼ひとりで使うつもりなら相当広いし、私が一緒でも充分すぎる。都心の夜景が窓から見えた。

「シャワー、お先にどうぞ」

口にしてから、期待していると言わんばかりのセリフだったと焦った。要さんは少しだけ笑う。

「たどたどしくなってしまうな、俺もおまえも」

たどたどしくもなる。三年半近く一緒に仕事をしていて、今この瞬間ほどのイレギュラーはない。

シャワーを終えて、バスローブ姿で寝室に入った。
要さんもバスローブ姿で、ベッドに腰掛けていた。そこから先の言葉はほとんどいらなかった。
私はベッドに歩みより、彼が私の手首をつかんだ。初めて飛び込んだ腕の中は暖かく、要さんの香りが強く香った。
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