敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
明け方目覚めると、布団から出た素肌に寒さを感じた。布団をずりあげて、自分のいる場所に思い至った。

昨晩、私は要さんとホテルに泊まった。
要さんに抱かれた。
忘れたなどと都合のいいことは言えないくらい、ドロドロに溶けあって貪り合った夜だった。

要さんは私の隣で静かな寝息をたてている。
このまま彼の目覚めを待ちたくない。布団から出て、素早く衣服を身に着けた。

今日は土曜、シャワーは自宅に帰ってからでいい。最低限の身支度をパウダールームで整え、部屋に戻ると、要さんがちょうど目覚めた様子だった。挨拶をして、部屋を出よう。お互いに昨晩のことを振り返る暇はない方がいいだろう。

「高垣」

要さんが私を呼ぶ。枕元に歩みよりながら応えた。

「はい、ここにいます」

すると、布団から伸びた彼の手が私の手首をつかんだ。

「高垣、ゆうべのことは……」

布団に横たわったまま、要さんは私を離さない。真剣なブラウンの瞳が私を射貫くけれど、それ以上の言葉が聞こえてこなかった。
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