敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
私は苦笑して、執成す言葉を選ぶ。

「大丈夫です。あれきりのこと」
「そうじゃなくて」
「私は忘れます。だから、要さんも」

そのつもりで抱かれた。一夜の遊び相手。婚約者のいる人と関係を持つのはいけないことだから、私はこれ以上彼の遊びには加担しない。

私があまりに拒絶的だったからだろう。要さんは私との会話を諦めたようだった。
私は彼の手をはずし、離れてお辞儀をした。

「お先に失礼します。月曜は朝礼がありますので、よろしくお願いします」
「……わかった」

身体を起こし、ベッドに腰掛けた姿勢で、要さんはうつむいていた。
大丈夫。あなたの部下は余計なことは言わない。
だから、もう不誠実な遊びは控えてほしい。あなた自身の未来のためにも。

六本木ガーデンヒルホテルの広々としたエントランスを抜け、外に出る。都心の早朝は土曜ということもあって静かだ。冷たい風が心地いい朝だった。





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