敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
2.決意
年が明けた。正月は埼玉の実家で祖父母と過ごしていたため、要さんのことも仕事のこともあまり考えずにいられた。
我が家は母子家庭で、母も早くに亡くなっている。高校生からは祖父母と暮らし、大学も祖父母宅から都内まで片道一時間半かけて通ったものだ。
仕事始めに合わせてマンションに戻り、例年通り出勤する。
「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」
「ああ、おめでとう」
要さんとはかすかなぎこちなさを残してはいるが、問題なく接することができている。年の瀬のあの夜について、お互いに語り合うことはない。必要ないからだ。
私はいつもと同じように仕事をするだけ。
休み中に来ていた郵便物の整理やメールの対応。要さんのスケジュールのチェック。
「午後は社長とご一緒でしたね。私は同行ではないのでよろしくお願いします」
「わかった」
新年初日の要さんはどこか口数が少なく見えた。正月休みの間に、気まずさがいっそう増したのだろうか。そういうことなら少し悲しい。あの夜を忘れるつもりだが、後悔はしていないのだから。