敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
要さんとの一夜を思い出に、この先も彼の秘書を続けていくつもりだった。彼が婚約者と一緒になり、岩切製紙の社長となっても支えるつもりだった。

しかし、やはりそんなずるいことを神様は許してくれない。

いや、神様がいるとしたら、きっと私にプレゼントをくれたのだ。お腹にいるのは愛する人の赤ちゃん。私はこの子を産まないという選択肢を持っていない。
絶対に産もう。ひとりでも育て上げよう。

時間を見つけて出かけた産婦人科で、妊娠の診断をもらい、私は退職しようと決めた。
一月も半ば、月曜の朝に私は要さんに頭を下げた。

「退職?」

「はい。実家の祖父母のためにも近くで仕事を見つけようと思っています」

妊娠などとは口が裂けても言えない。祖父母は七十代に差し掛かる年齢だが、元気にしているので、理由に使って申し訳ないと思った。

「申し訳ありませんが、二月いっぱいで退職させていただけたらと思います」

つわりはあるが、動き回れないほどではないし、二月ならお腹もまだ膨らんでいない。彼にバレずにやめられるだろう。

「どうしてもか?」

要さんは険しい表情をしていた。

「俺はおまえにやめられると困る」
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