敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
3.あの日から



季節がめぐり、ふたたび十二月の師走がやってきた。

木枯らしが吹く中、私は襟を掻き合わせて歩く。
マザーコートの中、抱っこ紐に包まれた生後三ヶ月の息子はすやすや眠っている。

「大地(だいち)、ほっぺ真っ赤」

首が据わったばかりの愛息子・大地の外気浴のために、寒いけれど午前中は近くの公園に連れ出すようにしている。
近所の保育園の子どもたちが遊びにきたりするので、大地にもいい刺激なのだ。
冷たい風に吹かれ、公園の木や鳥を眺め、たまに子どもたちに囲まれ……。スーパーで買い物をして帰る頃に、大地はいつも眠ってしまう。

大地と暮らす木造のアパートに戻ってきた。
よく眠る大地を下ろすのをいつも躊躇う。布団に寝かせると決まって起き出すのだ。背中にスイッチがついているのではという話はよく聞くけれど、まさにそんな感じ。
悩んだ末に抱っこ紐に入れたまま、買い物荷物を整理し、簡単に昼食の用意をした。

埼玉北部の実家、その隣町に住み始めて十ヶ月になる。
岩切製紙を退職した私はお腹の中の大地とともに埼玉の実家に戻った。
祖父母に好きな人の子を身ごもったことを告げ、頭を下げた。

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