敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
要さんからは何度か連絡があった。
元気にしているかという他愛のない様子伺いから、気候が崩れたときは、雨は大丈夫かなどというメッセージも届いた。
なんだか連絡を取る理由を探しているみたいだった。
彼から離れなければいけないと思いつつ、メッセージアプリをブロックも仕切れず、メッセージにはその都度短く『元気です』『大丈夫です』と答えた。夏頃に、こちらからメッセージを送った。

『もう連絡を取るのはやめましょう』

夏が過ぎれば、お腹の子は生まれてくる。もう振り返らないほうがいい。
要さんからの返信はなく、それを同意だと取った。

お盆に神野を始めとした同期が、レジャーでこちらに来るついでに寄ると提案してきたが、体調がすぐれないという理由で断った。八月の私は臨月に入り、ごまかしようのない大きなお腹をしていたからだ。
神野らに私の妊娠がバレれば、誰かの口からそれが要さんに伝わらないとも限らない。

同期と連絡を取り合うくらいが私の世間との繋がりだった。
もともとこの土地も、母が病に倒れてから越してきたので、幼いころからの知人はいない。寂しいというより身軽に感じた。
これからこの土地で、大地と生きていく。
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