敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
その日は夕食に招かれ、大地とともに実家にやってきた。
隣町なのでバスで向かう。帰りは祖父が車で送ってくれると聞いている。
大地とふたりきりは幸せだけれど、産後から腰痛は治っていないし、眠れないので疲労もある。少しの間でも抱っこを代わってもらえるのはありがたかったりもする。
年末年始は一緒に過ごそうと言われているので、甘えるつもりだ。

「都子、おかえり」

出迎えてくれた祖母は、どこか不安そうな顔をしていた。何かあったのだろうか。

「おばあちゃん、どうしたの? 顔色が悪いよ」

ただいまもお邪魔しますも言わずに、祖母の顔を覗き込むと、奥から祖父が出てきた。

「都子、今日の昼におまえを訪ねてきた人がいた」

言葉にならない感情が押し寄せてきた。
神野たちではない。神野たちなら、絶対に私に連絡をする。そもそも実家の住所まで知らないだろう。

祖父が名刺を差し出してきた。一目見て、手に取る前にわかった。あの人の名刺だ。

「岩切要……。おまえが務めていた岩切製紙の社長だそうだ」

見れば肩書が代表取締役社長となっている。要さんのお父さんは早く代替わりして会長職に就きたいと言っていたし、要さんが社長になっていてもおかしくはない。
だけど、なぜここに来たのだろう。
もう連絡は取り合わないと言ったし、彼も納得してくれたと思っていたのに。
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