敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「都子、気になることがあるのよ。昼間、岩切さんがいらしたときに、ベビーベッドの返却と時間がかぶっていてね」

祖母の言うベビーベッドは、生後ひと月の間、実家に居候していたときにレンタルしたものだ。自宅まで引き取りに来てくれるサービスを利用したのは私だけど、引き取りの日時は業者と祖母がやりとりしていたはず。

「玄関先に、ベビーベッドがあったのよ。梱包して箱に入れたものだけど、箱には記載があった。もし、岩切さんがそれを目にしていたら」

この家には祖父母しか住んでいない。それは家の雰囲気からもわかるだろう。玄関先に入ったなら余計に。
そこにベビーベッドがあれば、奇異に映るに違いない。

「大丈夫だと思う。そこまで気にしていないと……」

そのときだ。玄関のチャイムが鳴った。私はびくりと肩を揺らしてしまった。
大地を抱いている祖母に変わり、祖父が玄関に向かう。私に「出てこなくていい」と短く言いう。
鍵と玄関のドアが開く音。

「たびたび申し訳ありません」

その聞き馴染んだ声に、震えた。動揺の震えだった。
間違いない。要さんだ。
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