敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「あなたもしつこいですね。この家に都子はいないと言ったでしょう」

私は自分の靴が玄関にあると思い至った。

「押しかけて申し訳なく思っています。でも、どうしても都子さんと直接お話がしたくて、参りました」
「本人に連絡を取ってください。それで拒否されたら、もう諦めてください。社長さんでも、こんなのはストーカーだ」

祖父は私の告白から要さんに悪い感情を持ってしまっている。余計に言葉が辛辣だ。
このまま祖父に任せていいだろうか。直接会って私がもう連絡をしないでほしいと言うのが筋だろうか。

すると次の瞬間、大地が大きな声で泣き出したのだ。祖母の腕で、確かにずっと機嫌はよくなかったけれど、いきなり大声をあげるとは思わなかった。
玄関にまで響いているだろう赤ん坊の泣き声。要さんにも聞こえている。

「都子さんは今、ここにいますよね」

要さんの声が泣き声の合間に聞こえた。意を決したという様子の声だ。

「どうか、ひと目だけでも会えませんか。どうしても伝えたいことを伝えられないまま、離れてしまいました。やっと、彼女と向き合えるように……」
「あんた、どの面下げてそんなことを言えるんだ。人の孫に」

祖父の気色ばんだ声に私は立ち上がった。
祖母が「待って」と小さく言ったが、大地を任せて玄関に続く廊下に飛び出した。
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