敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「わざわざありがとうございました。ですが、私は要さんに気持ちはありません。この子と生きていければいいです。どうかお引き取りください」

私は大地を抱いたまま、頭を下げた。要さんは私をじっと見つめる。何もかも見透かしてしまいそうなブラウンの目で。

「俺は諦めきれない。それに高垣の腕の中にいる子は間違いなく俺の子で、岩切製紙の跡継ぎの資格のある子だ。放ってはおけない」
「この子を取り上げるつもりですか? 絶対に渡しません」

ぎりと睨む私をどこか寂しそうに見つめ、要さんは言った。

「無理やり引き離すようなことはしない。だけど、俺にもチャンスをくれないか。この子の父親になるチャンスを。高垣の夫になるチャンスを」

あり得ない。そう答えようと思った。
しかし、ここまで我儘を通してきたのは私だ。彼は筋を通して私を迎えに来ている。

そして、私の中にあるのだ。
岩切要に恋していた頃の気持ちが。まだ生きている。

「隣にいたい。高垣とこの子に嫌な想いはさせないから。どうか、チャンスをくれないか」
「要さん……」

祖母が私の顔を覗き込んでくる。

「都子、ふたりで話したほうがいいんじゃない?」

< 45 / 108 >

この作品をシェア

pagetop