敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
祖父がしかめ面で言葉を遮った。

「いや、今日は帰ってもらえ。どちらにしろ、出直してもらった方がいい」

祖父はまだ要さんに対して納得していないのだ。私は祖母に大地を預け言った。

「要さんを送ってくる。大地をお願い。すぐに戻ります」

要さんは深々と頭を下げて、私の実家を出た。近くのコインパーキングに駐車しているというので、そこまで送ることにした。

「昼間と夜、二度も来るなんて」
「諦めきれなくて引き返してきたんだ。高垣に連絡しないで来たのもわざと。不意打ちだって会いたかった。卑怯だろ」

自嘲的に笑う要さん。寒い師走の風に首をすくめると彼がこちらに向き直り、自分のマフラーを私にぐるぐると巻き付けてくる。

「やるよ。寒いから冷えないように」

優しいところは全然変わっていないと思いつつ、私はマフラーを外して返した。

「あの子を抱っこして歩くことが多いので、この冬はマフラーをしていないんです。邪魔になるので」

言葉を言い終える前に抱き寄せられた。
驚いて身をこわばらせたけれど、彼の力強い腕は私を解放する気などない。

「会いたかった。本当に会いたかった」
「は、離してください」
「たったひと晩、高垣を俺のものにした。あの夜が忘れられなかった。ずっと片想いしていると思っていたから、高垣が俺の気持ちに応えてくれたのが嬉しかった」

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