敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「おまえのことがずっと好きだった。一緒に仕事をしながら、三年以上片想いをしていたんだ」

私は身をよじり、要さんの熱い抱擁から抜け出す。このまま甘くささやかれ、抱きしめられていたら、身も心もゆだねてしまいそうだから。

「私と大地の存在は、要さんにとっては醜聞になるのではないですか? 隠し子になんですから」
「愛し合ってできた子が醜聞のわけがない」
「庶民の私と岩切製紙の社長の要さんでは、身分違いです。もともと、猪川グループのご縁組みがあったあなたに私では……」
「そんなものが都子の並べる別れる理由なのか?」

要さんがまっすぐに私を射貫く。

「今の言い訳には都子の心が入っていない。都子の気持ちが知りたい。俺は大地を授かった夜に、都子と気持ちが通じ合ったと感じた。あれは気のせいだったのか?」
「……私……」

あなたが好きだと言いたい。だけど、本当に応えてしまっていいの?

「まだ混乱しています。時間をください」

私の小さな声に、要さんは抱擁を解き、一歩引いた。何もしませんというように両手を顔の横にあげ言う。

「ひと月かけて気持ちを動かすと言っておきながら、性急だったな。悪い。そばにいてくれるだけで嬉しいのに」

優しく細められた目に、胸がきゅっと切なく傷んだ。
向き合って、私はこの人を受け入れていきたい。自分の覚悟に折り合いをつけたい。
彼がくれたこのひと月で、私は選択しよう。大地と私の未来、要さんの未来。何が一番いいかを見極めよう。

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