敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
「それじゃあ、都子がひとりで面倒を見ることになってしまうだろ。教えてくれれば、俺も調乳や寝かしつけを担当する」
「要さんには日中のお仕事があるでしょう」

要さんは考えるように視線をめぐらせ、頭をかいた。

「正直に言えば、赤ん坊がこれほどよく起きるとは知らなかったよ。この状態をひとりで見るなんて、普通に拷問と一緒だろ。長く眠れないのは、本当に苦しいはずだ」
「いっときのことですし」
「そのいっときを手伝えないで、何が夫だよ。俺にも何かさせてほしい。一回授乳と寝かしつけを代わるだけでも、連続して眠れるようになるんじゃないか?」

そう言って、要さんはベッドの上で手足を伸ばしている大地を抱き上げた。

「大地だって、本当はぐっすり眠りたいんだよな。ママを困らせたいわけじゃないよな」

大地に呼びかけ、にっこり笑う。大地はつられてにこっと笑った。
驚くけれど、要さんと大地にはこういった通じ合うような瞬間があるのだ。男親と息子の絆のようなものを見ると私の胸は喜びとも嫉妬ともつかない気持ちになってしまう。

「いいんですか?」
「いいんだよ。頼れ。秘書時代から、都子は自分でなんでも処理しすぎだ。俺の無茶ぶりだってさらっとこなしていた」
「無茶ぶりだってわかって仕事を振っていたんですか?」
「悪かったよ! そんなわけで、俺に甘えてくれ」
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