敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
私の前の要さんはいつだって、気遣いもなく合理的で、雑にも感じるような扱いを私にしてきた。
もちろん、私はそんな彼の行動こそ気を許してくれている証拠だと思って接してきた。彼の心の内にそれほど熱く甘い感情があるなんて、知らなかった。

「都子さんがいなくなって、『彼女を迎えにいきたい。きみには失礼かもしれないが、婚約解消を進めたい』ってすごく焦っていてね。私の恋人や親の関係でなかなか進まなくて、本当に迷惑をかけてしまったわ。再会できて、同居が始まって、要さんはずっと心にしまっていた愛情を都子さんと大地くんに与えたくて仕方ないんじゃないかしら」
「それは……ちょっと感じます」

愛情のこもった眼差しや、感極まった瞬間のハグ。同じベッドで眠っても決して触れてこないけれど、大地が夜泣きをすればすぐに飛び起きて抱っこを代わってくれる。
これが愛でなくてなんだろう。

「私も早く、ほのかの父親とこれからのことをはっきりさせなくちゃ。可愛い娘のために」
「麻里佳さんはお立場もあって、勢いで動けなかったことも多いと思います。でも、気持ちに素直に動けるように、望む未来にたどり着けるように応援しています」
「ありがとう、都子さん」

昼食を取り、たっぷりお昼寝をしたほのかちゃんに授乳を済ませると、麻里佳さんは帰っていった。
今日話せてよかった、と胸が温かくなる。
一方でなかなか帰ってこない要さんのことが心配でもあった。

< 68 / 108 >

この作品をシェア

pagetop