敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
要さんが帰ってきたのは十六時を回ってからだった。
厳しい表情をしていたので、実家での出来事があまりいいことではないのが察せられた。

「おかえりなさい。麻里佳さんは一時間ほど前にお帰りになりました。ご実家はいかがでしたか?」
「言いにくいことだが、隠していても仕方ない。麻里佳の両親、猪川社長夫妻がうちにやってきた理由は、俺と都子を訴えるという話だった」
「え? 要さんと私を?」

猪川社長らが私の存在を知っているとは思わなかった。

「婚約解消の際に、おまえのことは話していない。大地のことも確証があったわけではなかった。おそらく、調査会社でも頼って俺の身辺を探らせたんだろう。麻里佳の娘と月齢の変わらない子どもがいて、内縁の妻を家に呼び寄せたと」
「要さんの婚約期間中に関係を持ってしまったのは私が悪いです」
「本人から聞いていたと思うが、あの時点で麻里佳は妊娠していた。両親には俺ではない男の子を身ごもったと告白もしている。猪川社長らは認めず、俺の親には『要さんの子をみごもったから結婚を早めたい』と言っていたんだ」

だから、あのとき社長は要さんに言ったのだ。彼女のお腹にはおまえの子がいる、と。
しかし、麻里佳さんと連絡を取り合っていた要さんは真実を知っていたのだ。

「あの、でもそれだと麻里佳さんの立場がいっそう悪くなりませんか? ほのかちゃんは大地より先に生まれていますし、妊娠時期も」

向こうの主張通り婚約期間内の不貞なら、麻里佳さんも同罪だからだ。
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