敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
要さんは今年三十一歳、猪川麻里佳さんは私と同じ二十六歳。
おそらくは近いうちに正式な婚約、そして結婚と段階を進むのだろう。

猪川家と岩切家は日本橋に軒を連ねていた江戸、明治期からの付き合いだそうだ。岩切家は製紙業を拡大し、会社を大きくした。一方、河岸で舟の運輸を商いにしていた猪川家は陸上交通の発達に伴い運輸業から観光船を中心とした観光業に乗り出し成功している。

岩切製紙の跡取りである要さんと、猪川グループの令嬢である麻里佳さんの結婚は、ふたりが子どもの頃から決められていたという。
ふたりの結婚により、岩切家と猪川家の関係は強固となる。製紙業のみならず多角的な経営を展開している岩切製紙にとって、猪川グループの観光産業のノウハウはぜひほしいものだろう。すでに合資プロジェクトもいくつか進んでいる。
要さんは間違いなく、麻里佳さんと結婚するのだ。

本社に車を置いて、私も退勤だ。
電車に揺られて蒲田のひとり暮らしのマンションに帰ってくる。レトルトのカレーをあたため、冷凍のほうれん草を使って味噌汁を作った。大学時代と変わらない食生活だなと思いながら、ひとり手を合わせる。
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