敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
黙っていようと思ったが、どうしても自分の意志を無視できない。
私はきりっとふたりを見据えて、なるべく落ち着いた口調で言った。

「この部屋に、麻里佳さんとほのかちゃんが遊びにいらっしゃいました。先日のクリスマスイブのことです」

知らなかったようだ。ふたりが顔色を変えた。

「麻里佳さんと要さんとたくさんお話をしました。私には猪川社長ご夫妻のお話の方が信じられません。私は麻里佳さんと要さんを信じます」
「なによ、偉そうに」
「あの男も馬鹿だが、この愛人も馬鹿な女だ」

視線を鋭くして私は答えた。

「私をなんと言ってくださってもいいですが、要さんの悪口はやめてください。私の夫は誠実な人です」

猪川社長は憎々しげに私を睨みつける。

「猪川グループにたてついたことを後悔させてやるぞ。慰謝料どころで済むと思うな」
「なんでもご自分たちの思う通りになると思っているのではないですか? 麻里佳さんも、要さんも。ふたりの話を聞いていたら、こんなことにはなっていないと思います」

私は大地を抱きしめ、彼らに対峙する。どうしても許せない。

「娘の麻里佳さんと孫のほのかちゃんをなんだと思っているんですか? 会社やご自分たちの体面より、大事なものがあるではないですか?」
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