敏腕社長との秘密の身ごもり一夜~身を引くはずが、迎えにきた御曹司に赤ちゃんごと溺愛されました~
育児は大変だけれど、大地と離れたくない気持ちもある。幼稚園に入る年までは一緒にいたいというのが本音だ。

「都子がそう思ってくれているなら、俺はそれでいい。ふたり目や三人目も考えたいしな」
「気が早いです」

そんなのんきな様子の要さんは、今までよりずっとくつろいで見える。挨拶が終わったら日取りを決めて婚姻届を提出するつもりだ。私たちは正式に夫婦となる。
結婚式をする予定はないが、家族になれればそれでいいし、彼は周囲の人に私と結婚したことを伝えるだろう。岩切製紙の同僚たちにはそのとき挨拶に顔を出そうと思っている。

要さんがすっかり穏やかな様子なので、私は知らなかったのだ。
その日、元同期の神野から久しぶりにメッセージが届いた。

『最近どう?』

そんな内容に、なんと返信したものか迷いながら、『元気だよ』と返す。
それから大地の話をしようか、要さんとの関係を伝えようか悩んで、やめた。要さんが明らかにしてからの方がいいだろう。

『こっちは大変だよ』

神野のメッセージはそう続く。

『岩切製紙、やばいかもしれない』

その文言にどきりとした。やばいとは経営が? そんな話は何も聞いていない。
『どういうこと?』と尋ねるとすぐに返信がきた。
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