溺愛社長とお菓子のような甘い恋を
12.お見合い当日
今日は海斗さんが横川真理愛さんとお見合いをする日だ。
きっと今頃、どこかの料亭やホテルで会っているのだろう。
会長のご機嫌な様子が目に浮かぶ。
でも海斗さんの様子を思い浮かべるのは嫌だな。
「海斗さん、怒るだろうな」
さっき、社長室にある海斗さんのデスクの上に退職願を置いてきた。
海斗さんが目にするのは、来週の月曜日。出社した時だろう。
急に辞めること、なにも相談しなかったから驚くかな。
海斗さんだって気が付くはずだ。退職届が別れを意味していることくらい。
連絡先はブロックした。
なんど連絡してきても繋がらないだろう。
酷い別れ方だが、こうするしかない。
少しずつ家の片付けもして、引っ越しもしないといけないな。
「いつか、君のパパの話ができるといいね」
そっとお腹に話しかけると、私は徐々にやってきたつわりが辛くてベッドに中で丸まって目を閉じた。
インターホンの音が聞こえ、目が覚めると部屋の中が真っ暗だった。
いつの間にか、もう夜になっていたのだ。
電気をつけて、オートロックのインターホンのモニターを見ると帽子をかぶって俯いた宅配便のお兄さんが立っていた。
「はい」
「お荷物です」
「今、開けます」
荷物って何だろう。
何か頼んだっけ?
そう思いながら、オートロックを解除する。
少しして玄関のインターホンが鳴らされ、「はい」と開けた。
すると……。
「よう」
そこには不機嫌な顔の海斗さんが立っていた。
「海斗さん……? えっとどうして……」
海斗さんだとは思わなかったから、戸惑って顔が引きつる。
しかも宅配便らしく帽子や上着を着て装っていた。
下で宅配便を装ってインターホンを押したのは海斗さんだったのか。
「ちゃんと誰か確認しないと危ないだろう」
海斗さんはそう注意をしながら、玄関を開けて中へするりと入り込む。
帽子と上着を脱ぐと、下には上質なスーツを着ていた。
いつもと違うスーツにお見合いに行ったのだろうと察する。
でもどうしてここに?
「どういうことだ、これは」
海斗さんが胸ポケットから取り出した退職願にあぁ、と目を閉じた。
来週の月曜まで会社に行かないであろうと思っていたが、お見合い後に会社に寄ったのか。
「お見合いを終えて、会社に行ったらこんなものが置いてあった。お前の机は綺麗になっているし、連絡しても繋がらない。どういうことか説明してもらおうか」
「だからってなにも宅配便装わなくても……」
「そうでもしないと絶対開けてくれないと悟ったからな」
声に怒りが含まれている。
当然だよね。
「とりあえず、話をしないか?」
「はい……」
観念して部屋の中へ招いた。