溺愛社長とお菓子のような甘い恋を
13.光が差す方へ
それから海斗さんは毎日のようにお見舞いに来てくれた。
しかし、会長を説得したのかお見合いの話はどうなったのかとか、全く教えてくれなかった。
ただ明るく笑顔で他愛ない話をするだけ。
一度、「どうなったんですか?」と聞いたが、「無事に退院出来たら全部話すから」と言われてしまった。
そんな風に言われては、追求しにくい。
きっとストレスをなくそうとしてくれたんだろうなと思う。
忙しいのに毎日顔を見せてくれるし……。
そんな日々が二か月ほど続き、安定期に入った頃、私は無事に退院できた。
「足元気をつけろよ」
「うん」
海斗さんが迎えに来てくれて、自分のマンションへ戻る。
ホッと一息ついたので、私から切り出した。
「で、結局どうなったんですか?」
「うん。まず、お見合いの件だけどあの後、横川家の方から断りの連絡があったんだ」
「え?」
それには驚いた。
真理愛さんは結婚してもしなくてもどちらでもいいと話していた。
どちらかというと、そのまま結婚するつもりで私に愛人話を持ってきたのではないかと思う。
それが、向こうから断ってきただなんて……。
「どうやら、二人の時に真理愛さんにいかに花澄が好きかを話したことが、相当気持ち悪かったらしい」
「……どういうことですか?」
目が点になる。
海斗さんは苦笑いだ。
もしかしてお見合い中、ずっと私とののろけ話を聞かせ続けていたのだろうか?
あの淡々とした真理愛さんが苦痛に感じるほど。
「まぁ、それ以外にも真理愛さんの方が俺たちの調査をしていたらしい。花澄の妊娠も知っていたよ。跡取りとか相続が面倒になるので、子供ができた人とは結婚できませんってさ」
「あ、そこですか」
決定打はそこだろう。
もしかして初めて産科へ通院した時から調べられていたのだろうか。
調べられていたなんて気が付かなかった。
少しだけぞっとする。
「それと、親父のことだけど……」
「はい」
そこが一番肝心だ。
あの会長のことだから次にまたお見合い話を持ってきてもおかしくない。
「結論から言うと、認めてくれたぞ。俺たちの結婚」
「本当ですか!?」
驚いて声が大きくなる。
海斗さんも嬉しそうに大きく頷いた。
「あ……、でもまさか絶縁したとか……?」
「いいや。俺は社長のまま、花澄も秘書のままだ」
「そうなんですね、良かった。でもどうして……?」
あの会長がすんなり認めてくれただなんて驚きだ。
一体どうして……?
「それが、横川から断られて意気消沈していたところに、お袋が親父に激怒したんだ」
「お母さん……ですか?」
そういえば海斗さんのお母さんは一度も見たことがない。
会長夫人、どんな人なんだろう。