俺の彼女は
「お前見たことないだろ、高田さんの笑顔。破壊力ハンパねぇぞ」
知ってるよ、その破壊力。
てかその教室の相手、たぶん、俺だわ。
学校では恥ずかしいし秘密にしたいって言ってるのに、あの日、「ちょっとだけ」、なんて咲姫が言うから、俺もつい気が緩んだ。
「いいよなあ、俺も女子になりてぇ」
それはまっぴらごめんだけど、俺ももっとそばにいたい。
誰の目も気にせずに。
「高田さんって誕生日いつだろう?」
教えないよ。
「もう一回連絡先聞こうかな」
俺はもう協力しないぞ。
「高田さん、彼氏いるのかなぁ」
そんなの、言えるわけない。
言えない。
言わない。
お前にだけは。
俺の彼女は、
「お前の好きな人」、
だなんて。
「あー、もっと彼女のこと知りたい」
教えないよ。
たとえお前が、俺を親友と呼んでくれても。
彼女が実は不器用なことも。
本当は努力家で、いつも一生懸命なことも。
素直で甘えん坊で、優しいことも。
寂しがり屋で、すぐ泣いちゃうことも。
不安症で、テスト前の夜は、朝まで電話をつないでいないと眠れないことも。
着やせするけど、実は二の腕も、太ももも、お腹の辺りもプニプニしてて、抱き心地が最高なことも。
あのかわいい笑顔を引き出す、笑いのツボも。
俺だけに見せる、素顔。
俺にしか見せない、笑顔。
俺だけが知ってる、彼女。
誰にも見せたくない。
誰にも教えたくない。
だから言えない、彼女の話。