お飾り側妃になりましたが、ヒマなので王宮内でこっそり働きます! ~なのに、いつのまにか冷徹国王の溺愛に捕まりました~
 そう泣く友人の肩を抱きしめたのは、寒い冬だったというのに。
 今のオリアナは、ぽつんと誰の温もりも感じない冷たい石の床に座り続けている。
 辺りはしんと静まり返り、同じ棟に住む位の低い側妃たちは、もう寝たのだろう。
「なんとかなる、か――」
 過去の言葉を、オリアナはもう一度唱えてみる。そして立ち上がり、勢いよく走ってベッドへと飛び込んだ。
「そうよ、なんとかなる! これくらいでくよくよ考えたって仕方がないもの」
 きっと、明日から、またチャンスがあるはず――。
(いつかはきっとお伝えできるわよね? 同じ王宮内にいるのだし)
 遠い田舎でライオネルを思い出していた頃に比べれば、ずっと幸せなはずだ。
「ひと目だけでも今のお姿が見れたのだもの。明日からの未来で、いつかきっと話せる日も来るわ!」
(だから、今はくよくよしないで寝よう。会いたかった彼の姿を十年ぶりに見られたのだから)
 そう自分に言い聞かせると、オリアナは冷えたシーツの中に潜り込み、体を包む甘い香りに故郷で家族と摘んださくらんぼの実を思い出しながら、そっと目を閉じた。 
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