お飾り側妃になりましたが、ヒマなので王宮内でこっそり働きます! ~なのに、いつのまにか冷徹国王の溺愛に捕まりました~
「こんな大金……! すぐになんとかしろと言われても……」
 驚いた父が叫んだが、ここでそんな友人は知らないとか、騙されて保証人になったんだとか、これまでの自分の過去を欺くような言葉を口にしないのはとても立派だと思う。
 だが、保証人であるのを認めたことに機嫌をよくしたのか、男はひょいっと帽子をもう一度かぶった。
「そちらの事情は関係ありません。私としましては、金さえ返していただければいいのですから。ああ、たしかに、この家に金目のものは少なそうですが……」
 貴族とはとても思えない、普通の町人よりも少しだけランクが上のブルーグレーの内装を眺め、続いてオリアナと妹に舐め回すような不快な視線を向けてから、にやりと微笑む。
「そちらのお嬢様は金になりそうですね。なかなか美しい容姿だ。それに下の妹さんも。ああ、あと奨学金で外国に留学されているお兄様もおられるのでしたね? 世の中には、その年頃の男女を好む手合いは多いですから、いい娼館さえ見つかればこの額でもなんとかなるとは思いますよ」
 オリアナはハッとして、そばにいる妹の体を抱きしめた。
「では、また三日後に。お返事を伺いに参りますので」
 にやりと笑いながら見つめる瞳に浮かんでいるのは、なんと計算高い色なのか。まるで、すでにオリアナたちが商品であるかのように値踏みをしている。


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