お飾り側妃になりましたが、ヒマなので王宮内でこっそり働きます! ~なのに、いつのまにか冷徹国王の溺愛に捕まりました~
「娘は売らん! もちろん、息子もだ!」
「かまいませんよ。私どもは、ただ金の回収をするだけです。できない場合、男爵様やお嬢様方の身の安全は当然保証しかねますが――。まあ、どちらのルートを辿っても、お嬢様たちとお坊ちゃまの未来は同じになるでしょうね」
(なんて嫌な男! 人をまるで品定めするかの如く全身を眺め、あまつさえ脅すような言葉を口にしていくとは!)
「父上、母上……。私は売られてしまうの……?」
 男が出ていった扉が閉まる音を聞き、震えている妹は、まだほんの十五歳だ。
(それなのに、よもやあんな話を持ち出すなんて!)
 相手は、金の余っている年老いた男か。それとも幼い体を組み敷くのに悦びを感じるような者をあてがう気なのか――。まだ十七歳の成人年齢にすら達していない妹には、考えただけでも身震いするほど恐ろしい話だろう。
 血の気をなくしている妹の亜麻色の髪の中に両手を入れて、思い切り強く引き寄せてやる。
「心配しないで! 私がなんとかしてあげるから」
「本当に?」
「ええ、本当よ。私が嘘を言ったことがあったかしら?」
「いいえ、ないわ。姉上はいつでもそう言って、なんとかしてくれていたもの」
「だったら、ここは私に任せて、どーんと大船に乗った気でいなさい!」
 まだ青い顔をしている妹に、胸を拳で叩いて宣言する。とは言ったものの、目の前に立っている父や母の不安そうな顔の通り、当然ながらあてなどなかった。
 外国に留学している兄に相談することも考えたが、彼にだって金がないのは、仕送りしている父を見てきた妹のオリアナが一番よく知っていた。
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