神様に何を誓ったか?
第12話
「今日は帰るね」
毎週のように彰の部屋に泊まっていた紗椰だったが、流石にこの空気では泊まるという選択肢は無いようだった。
「じゃあまた⋯⋯」
彰の住む賃貸マンションのちょうど真横に、地下鉄の入り口があった。紗椰が帰るときはいつも改札まで見送っていたが、この日は玄関で別れた。なんとなく、そうした方がいい気がした。 部屋に一人。これからどうしようかと彰が途方に暮れていると、インターホンが鳴った。
「お邪魔します」
「え?」
「よいしょっと」
紗椰は当たり前のようにバッグをソファの脇に置いた。
「え、帰ったんじゃ⋯⋯?」
「やっぱり泊まりたい」
「そうですか」
「⋯⋯また敬語」
紗椰が笑った。満面の笑みではないが笑った。この日何度も見ていたはずの笑顔が、何年も見ていなかったように感じた。
「ごめん。ちょっと混乱してしまって。泊まってもいい?」
「もちろん。紗椰はそれでいいの?」
紗椰は頷いて、バッグを置いたソファにちょこんと座った。
「彰とは、一緒に暮らしたいと思っとるんよ」
どうやら嫌われているわけではないらしいと分かり安心すると、彰は今まで自分がずっと立ちっぱなしであることに気付き、紗椰の横に座った。
「でも、その前に話しておきたいことがあって。でもそれは今日ではなくて。だから帰ろうとしたけどそれは嫌で⋯⋯」
紗椰はいつも、彰に対しては言いたいことをハッキリと言う。だが今日は珍しく、歯切れが悪い。
「何の話か知らんけど、ゆっくりでええよ」
彰は部屋の端にある小さな冷蔵庫を指差した。
「俺のプリン、食べたやろ」
紗椰はまた笑った。今度は、満面の笑みで。
「知らん」
さっきまでモジモジしていた紗椰は、どこか遠くへ行ってしまったようだった。
毎週のように彰の部屋に泊まっていた紗椰だったが、流石にこの空気では泊まるという選択肢は無いようだった。
「じゃあまた⋯⋯」
彰の住む賃貸マンションのちょうど真横に、地下鉄の入り口があった。紗椰が帰るときはいつも改札まで見送っていたが、この日は玄関で別れた。なんとなく、そうした方がいい気がした。 部屋に一人。これからどうしようかと彰が途方に暮れていると、インターホンが鳴った。
「お邪魔します」
「え?」
「よいしょっと」
紗椰は当たり前のようにバッグをソファの脇に置いた。
「え、帰ったんじゃ⋯⋯?」
「やっぱり泊まりたい」
「そうですか」
「⋯⋯また敬語」
紗椰が笑った。満面の笑みではないが笑った。この日何度も見ていたはずの笑顔が、何年も見ていなかったように感じた。
「ごめん。ちょっと混乱してしまって。泊まってもいい?」
「もちろん。紗椰はそれでいいの?」
紗椰は頷いて、バッグを置いたソファにちょこんと座った。
「彰とは、一緒に暮らしたいと思っとるんよ」
どうやら嫌われているわけではないらしいと分かり安心すると、彰は今まで自分がずっと立ちっぱなしであることに気付き、紗椰の横に座った。
「でも、その前に話しておきたいことがあって。でもそれは今日ではなくて。だから帰ろうとしたけどそれは嫌で⋯⋯」
紗椰はいつも、彰に対しては言いたいことをハッキリと言う。だが今日は珍しく、歯切れが悪い。
「何の話か知らんけど、ゆっくりでええよ」
彰は部屋の端にある小さな冷蔵庫を指差した。
「俺のプリン、食べたやろ」
紗椰はまた笑った。今度は、満面の笑みで。
「知らん」
さっきまでモジモジしていた紗椰は、どこか遠くへ行ってしまったようだった。