シュガートリック
……やっぱり識くんだ。
困ったような顔をしていた識くんは、私と目が合うとぱあっと顔色を明るくさせて。
私の名前を呼びこっちに駆け寄ってくる。
その破壊力にドキッとしながらも、私の目の前に立った識くんに声をかけた。
「識くん」
「ねえ、今日一緒に帰れる?」
「え?」
私のところにやってきて言った言葉はそれで。
唐突すぎて驚いてしまう。
そしてすぐ、私は気まずそうに目を逸らした。
「……えっとね、私……体育祭実行委員になっちゃって」
「え?」
「だからごめんね……!」
パンっと目の前で手を合わせて謝った私に驚く識くん。
そりゃそうだ。識くんだって私がやるとは思ってなかっただろうに。
「まじか……じゃあしばらく帰れない?」
「そうだね……」
「寂しいけど、しょうがないね」
サラッと寂しいと言った識くんにまた少しドキリとして。