シュガートリック
私に向き直って我に返った春哉くんは、私の手を離して謝ってきた。
「えっと……なんで急に……」
「……困ってるように見えたから」
「え……」
理由を聞くとそう答えた春哉くんに、ピタッと固まる。
「識に言い寄られてるんだとしたら、断った方がいい。あいつ誰にでもあんな感じだから」
「……あの、」
「あと前に俺が教室のドアで、その……邪魔って言った時も、困ってるように見えたし……」
「え」
「識は女にだらしないから勘違いするやつ多いんだ。やめておいた方がいい」
スラスラと真剣に言う春哉くんの言葉に呆然としてしまう。
……もしかして、春哉くんは私と識くんの噂を知らないの……?
春哉くんの様子からして知らなそうに見える。
前に教室のドアって……私が識くんに教科書貸した時だよね?
困っているというよりは恥ずかしくて照れてただけだけど……。