シュガートリック




私に向き直って我に返った春哉くんは、私の手を離して謝ってきた。


「えっと……なんで急に……」

「……困ってるように見えたから」

「え……」


理由を聞くとそう答えた春哉くんに、ピタッと固まる。


「識に言い寄られてるんだとしたら、断った方がいい。あいつ誰にでもあんな感じだから」

「……あの、」

「あと前に俺が教室のドアで、その……邪魔って言った時も、困ってるように見えたし……」

「え」

「識は女にだらしないから勘違いするやつ多いんだ。やめておいた方がいい」


スラスラと真剣に言う春哉くんの言葉に呆然としてしまう。

……もしかして、春哉くんは私と識くんの噂を知らないの……?

春哉くんの様子からして知らなそうに見える。


前に教室のドアって……私が識くんに教科書貸した時だよね?
困っているというよりは恥ずかしくて照れてただけだけど……。




< 127 / 344 >

この作品をシェア

pagetop