シュガートリック




「ならいいけど」

「え……?いいの……?」

「俺にとっては好都合」

「……?」


好都合……?

言っている意味がよく分からなくて何も言えない。


「じゃあ、攻めてもいいってことだよな」

「え、攻める……?」


そう言ってニッと口角を上げた春哉くんは。

急に私に手を伸ばしてきて。

え、え……?

顔に近づいてくるその手を見ながら呆然とする。
頬に、触れそうになった時。



────ガラッ



そのタイミングで教室のドアが開いて、春哉くんの手がピタッと止まる。

その音に反応してドアの方を見ると、


「…っ、雪音」

「識くん……?」


驚いたように固まった識くんが、私たちを見た。

なんで識くんがこんな時間に……?

識くんを見つめていると、春哉くんの方から大きなため息が聞こえてきてハッとする。


「……タイミング悪」





< 135 / 344 >

この作品をシェア

pagetop