シュガートリック
「ならいいけど」
「え……?いいの……?」
「俺にとっては好都合」
「……?」
好都合……?
言っている意味がよく分からなくて何も言えない。
「じゃあ、攻めてもいいってことだよな」
「え、攻める……?」
そう言ってニッと口角を上げた春哉くんは。
急に私に手を伸ばしてきて。
え、え……?
顔に近づいてくるその手を見ながら呆然とする。
頬に、触れそうになった時。
────ガラッ
そのタイミングで教室のドアが開いて、春哉くんの手がピタッと止まる。
その音に反応してドアの方を見ると、
「…っ、雪音」
「識くん……?」
驚いたように固まった識くんが、私たちを見た。
なんで識くんがこんな時間に……?
識くんを見つめていると、春哉くんの方から大きなため息が聞こえてきてハッとする。
「……タイミング悪」