シュガートリック
そう呟いた春哉くんに、識くんはハッとして顔を歪めた。
すると、早歩きでこっちに近づいてきて。
私のことを後ろから引き寄せると、識くんは春哉くんに向けて口を開いた。
「……雪音に近づくな」
「なに?関係ないだろお前には」
「うるさい」
不機嫌そうな声で春哉くんと話す識くんに、困惑する。
春哉くんはさっき私に向けていた表情とは変わって、睨むように識くんを見ていた。
「……識くん……?なんで……」
「……雪音のこと待ってたんだよ」
「え……?」
「……来て」
私を待ってたの……?ずっと……?
少し怒ったような低い声で話した識くんは、私の手を握り引っ張った。
識くん……っ?
抵抗することもできず、私は席を立ち識くんにされるがまま。
その識くんの横顔は、不機嫌そうなのに……どこか不安そうで。