シュガートリック




震える声を振り絞って出したのはいいものの、内心では諦めかけていた。


……その時だった。



「こんなとこでなにやってるんですかー?先生呼びますよー」


そんな声が、保健室のドアの方からして私も相手もピタッと動きを止める。
ポロッと涙が零れ落ちる。

男の人の声だ。
私の声が聞こえたのかもしれない。

それに安心して身体の力が抜ける。


私に覆い被さっている男の人は、顔を歪めて私から離れると。
舌打ちをして走って出て行ってしまった。


「はいはい行った行ったー」


聞こえてくるのは、鼻で笑うような声と、走る足音。
助けてくれた人が、男の先輩に向かって言った言葉だろう。


……助かっ、た?

そう思ってハッとする。

身体は辛いし、まだ震えが止まらない。
だけど、その人にお礼がしたくて急いでベッドから降りて個室から出ると。




< 158 / 344 >

この作品をシェア

pagetop