シュガートリック




突然のことに、何も分からなくて。
な、なんで私……今、押さえつけられて……っ。
逃げ場もなくどうすることもできない。

男の人を見上げると、思っていたよりも距離が近くて。
……っ、なに、なんでこんな、心臓うるさいの……っ?
普通なら私にとって怖いはずのこの状況に、ドキドキとうるさくて。


「……君、花染雪音でしょ?」

「……っ!?」


すると、またさらに距離が近づいて。
かああっと顔が熱くなってしまう。


「え、えっと……っなんで私の名前……っ」

「だって君有名じゃん」

「……っ」


そう、だった……。
ということは、この人も私のことをあの噂で認知してるってこと……っ?

この距離……っ、結構まずい状況なんじゃ……っ。
噂とは違う"本当の"私は、すぐ顔赤くなっちゃうのに……っ。



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