シュガートリック
後ろからは私を引き止めるような声がしたけど。
こんな泣き顔見られて、真っ赤な顔見られて。
これ以上は無理だ、と思って走ってその場から逃げ出した。
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学校を出て、歩いて家まで着く。
お母さんもお父さんも帰ってきていなくて、私はそのまま急いで自分の部屋に行くと。
バタン、とドアを閉めてすぐ私は床に座り込んだ。
「……どうしよう」
思わず逃げてきちゃったけど……。
さっきの出来事を思い浮かべて、頭を抱える。
知らない人に、キスされちゃった。
……普通に考えたら、最低な行為だ。
男の人の目を見ることが出来るのも、初めてだったのに。
そんな相手が、簡単に人にキスできるような人だなんて。
ショック以外の感情などない。
自分の唇を触りながら、鏡の中の自分を見る。
……顔、真っ赤。
自分の顔を見てはそんなことを思う。