シュガートリック
月居識という男
それから家を出て学校まで歩く。
学校に近づくにつれ目線が下がり、門の近くを歩くと周りから視線と声が集まった。
「花染さんだ……」
「羨ましいぐらい可愛い」
私の名前が聞こえる度に、鞄を持つ右手にギュッと力を入れる。
深呼吸をして門をくぐると、さっきよりも私への視線が増えて。
少し早歩きになりながらも誰とも目を合わせずに歩く。
……なんで、こんなに注目されちゃうのだろう。
そんなに見られると、居心地がよくない。
これはきっとこの先も慣れないこと。
玄関につき、靴を履き替えて中に入る。
ふぅ、と息を吐いて歩みを進める。
……よし、このまま教室に行けばいいだけ。
……今日も無事に、無事に……────。
「…あ、あの、花染さん……!」
「……っ」
一点だけを見つめて歩いていると。
私よりも背の高い男の人がスっと視界に入って。
ピタッと歩みを止めてしまう。