シュガートリック




「…うん、聞くよ」


一回息を吐いて、安心させるように微笑む。

そんな私を見て識くんは少し力が抜けたように感じた。
しばらくして、識くんはゆっくり口を開いた。


「……俺ね、両親が離婚してるんだ」

「……え」

「……父親の方に引き取られたけど、今は一人暮らししてる」

「……」

「顔も見たくない。俺の中に家族なんてもの存在しない」


どこか遠いところを見ながらも、冷たい表情をする識くんに少しゾクッとする。
識くんの右耳についているピアスが鋭く光る。

両親が離婚していることも、一人暮らししていることも、今初めて知った。


「……昔は二人とも仲良かった。近所の人からも、仲が良すぎる夫婦で有名だった。

俺はそんな両親に憧れてたよ……いつか俺にも大事な人が出来たらこんなふうになりたいって」


俯きながら話す識くんに相槌を打ちながら聞く。




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