シュガートリック
「…でも、俺が小学三年生ときに両親は変わった。急に仲が悪くなったんだ」
「…!」
「理由は知らない。なにがあったのかわからないけど、口を開けば喧嘩ばっかりで俺は見てることしかできなかった」
「……」
「……でも」
グッと強い力で拳を握った識くんに、息を飲む。
でも……?
「いつからか、喧嘩する度にお互いに暴力を振るうようになった」
「……っ」
「……その暴力、最初は父親も母親もお互いが対象だったんだけど……いつの日からか俺も対象になったんだ」
「……っえ?」
顔を歪める識くんに、驚いて弱々しい声が漏れる。
まさか……っ。
「…その時の俺はまだ子供だったから、怖くて関わらないようにしてたよ。
なのに、『お前のせいだ』って急に巻き込まれて髪を引っ張られたり蹴られたりした。父にも母にも」
「…っそんな」
「……今思えば虐待だね。どこまでもクズだよ」