シュガートリック




冷たい目、冷たい声で言った識くんに胸が痛くなる。
……そんなの、怖くて仕方ないに決まってる。なのに一人で耐えてきたっていうの?


「おかげで家族全員アザだらけだったよ。今はもうそんなものないけどね」

「…っ」

「……あ、でも一つだけ残ってるよ」


乾いた笑みを漏らしながらそう言った識くんに、嫌な予感がした。


「……右耳の裏に、昔父親に引っかかれた時の傷が残ってる」

「……っ!嘘……」

「それが嫌でピアス開けたんだよね。傷よりもピアスの方が目立つように」


キラリと光るピアスの裏側には引っかかれたような傷跡が残っていた。
どうしよう、胸が痛くて苦しい。泣きたくなってしまう。


「中学一年生になってやっと離婚したよ。どっちに引き取られるかで問題になったけど、俺にとってはどっちでも変わんないしどうでもよかったね」

「……っ」

「幸い、暴力振るわれるのは顔以外だったから同級生にはバレなかった。……春哉以外はね」




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