シュガートリック




「ほら、見てよあっちにいる男子。花染さんのことめっちゃ見てる。諦めてないんだよ」

「まあ確かに美少女だけどさー、話しかける勇気はないよね」

「それはそう。経験の違いがありすぎて住んでる世界が違うわ」


う……っ。
心にグサッと刺さりため息をつく。

経験の違いって……そんなものないと思うんだけどなあ……。

最近はあまり気にしていなかったけど、やっぱり改めて噂について聞くといい気分ではない。


「…っ、あ、あれ……!」


目線を下に落として玄関まで向かおうと歩いていた時。

急に女の子達がざわつき始めて、なんだろうと心の中で疑問に思っていると。


「…おはよう雪音」

「…っ!」


後ろから手をグッと掴まれて反射的に足を止める。
パッと後ろを振り向くと少し機嫌が悪そうな顔をした識くんがいた。


「お、おはよう識くん……!」

「……」

「……?識くん……?」



< 270 / 344 >

この作品をシェア

pagetop