シュガートリック




「し、識く……っ」

「久しぶりに練習、する?」

「……っ!」


腰に手を回されほぼゼロ距離で密着する。

識くんは私に疑問形で聞いてきたけど、きっと私に選択肢はない。
だって、目が本気だから。


「雪音、こういうの分からないことだらけでしょ?」

「…っ、」

「さっき他の男の話をした罰だから、ね?」


熱の篭った色っぽい瞳に見つめられて逸らせない。
心臓がうるさく鳴ってもうどうしようもない。

そうだよ、分からないことだらけだ。
キスの仕方も、識くんをドキドキさせる方法も、全部知らない。


ギュッと胸が掴まれたように苦しくなって識くんを見つめる。


「…っん」


すると、識くんの唇が重なってはすぐに離れた。

こんな一瞬でも心臓が壊れそうなほどうるさいのに。
…っ、なんか識くん、今日意地悪だよ……っ。




< 284 / 344 >

この作品をシェア

pagetop