シュガートリック
私が入った瞬間、教室にいた人達が一瞬静まり返って私を見た。
「…ねぇ、この間男の車に乗り込んでたって噂聞いた?」
「聞いた聞いた。すごいよねそれ、本当なのかな?」
「本当なんじゃない?だって、何人も男がいるって噂があるくらいだよ」
「あー確かに。まあ、花染さんって私たちとは住む世界が違いすぎるよね」
……違う、のに。
私の噂をするクラスメイトにそう言いたいけど。
私の経験上、信じてもらえないだろうから……。
自分の席について、深呼吸をする。
私の名前は花染雪音(はなぞめ ゆきね)で高校二年生。
この通り、私はみんなの噂の的である。
……全ては、この容姿が原因だ。
泣きぼくろ、そして口の下にほくろ。無駄に大きいこの胸。
昔から、色気があるだとか大人っぽいだとか言われてきた。
そして、たったのこれだけで一つの噂ができた。
『何人も男がいる』