シュガートリック
しまった、しれっと名前呼んじゃった……。
驚いたような顔をした月居くんに少し後悔する。
「そうなんだ。次会ったらそろそろ自己紹介しようと思ってたから省けてよかったよ」
「そう、ですね……」
どこか気まずくてぎこちない返事をしてしまう。
『昨日のこと、忘れてませんから……っ』
なんて、強気なことを言ったばかりですけど?
気まずいの私だけ?
なんでそんな楽しそうにニコニコ笑ってるの?
「あー、ダメダメ」
「え…なにが、ですか?」
「敬語ダメだよ、学年一緒なんだから」
ピトッと私の口に人差し指を近づけてくる月居くんに、身体の体温が上がる。
でも、そんなこと言われても……っ。
「いや、私はこっちの方が……」
「ダメ」
「う……っ」
そんな、顔で見つめられたら……っ。
どこか甘えるような、でも圧のある表情。
顔がいいせいでなにされても刺さるから困る。