シュガートリック
「…わ、わかった」
「うん、それでいいよ」
「…じゃあ私は帰るね……」
まだ慣れてなくてぎこちない返事になってしまう。
私はこの空気から逃げるように立ち去ろうと、靴を履こうとするけど。
「あ、あと」
「え?」
「月居くん呼びもダメだよ、雪音」
「……っ!」
そんな私を引き止めるように言葉を続けた月居くんは。
また私のことを下の名前で呼んできて。
そして……月居くんと呼んではいけないという変な要求まで。
どこか意地悪そうに笑う月居くんに、かああっと顔が熱くなっていく。
そんな私を見てさらに意地悪な顔をして。
「可愛いね、そんな赤くなっちゃうの?」
「……っ、見ないで!」
「見てるの俺だけだからいいでしょ」
「月居くんだけだから、とかそういう問題じゃ……っ」
「はいダーメ。識だよ、しーき」
急に距離を詰めてからかってくる月居くんに心臓がうるさく鳴っていて。