シュガートリック
そう言うと門を出て左に曲がった識くん。
ほ、ほんとに一緒に帰るの……っ?
ここまで来たらもう後戻りできない。
申し訳なくなりながらも、結局帰ることにして。
「あ、あの……」
「どうかした?」
「…なんで識くんは、私と……?」
しばらく歩いて、聞きたかったことを聞いてみる。
なんで私に構ってくれるんだろう。初めて会ったのは昨日なのに。
「んー……」
「……?」
「本当の雪音のことが知りたい……からかな?」
「……!」
少し考えるような仕草をして。
私を見てニコッと笑った識くんに、目を見開いてしまう。
それと同時に、心臓がドクンと大きく脈打った。
……本当の、私?
その言葉が、ストンと胸に入ってくる。
識くんの言った言葉の意味を理解する。
それって……噂の私じゃなくて素の私、ってこと?
確かに識くんは、噂の私が偽物だってことを知っている。