シュガートリック



今は授業と授業の間の休み時間に一人で廊下を歩いている。

流歌ちゃんがいないのには慣れたけど、やっぱり少し寂しいものだなあ。


そう思っていると。

前の方から歩いてくる人たちの楽しそうな話し声が聞こえて。
チラリと目が会わないように一瞬でその人たちを見る。


……っあ。

すると、そこには女の子何人かに囲まれながら笑顔で歩いている識くんの姿があって。

女の子達との距離感を目の当たりにして、流歌ちゃんの言っていた"あの"月居識という意味がわかった。


識くんの崩れることのない笑顔と、女の子達の楽しそうな声。

……私とは全然違う世界。

いくら私に"何人も男がいる"という噂があったとしても、こういうことは絶対に出来ない。


朝普通に話していたはずの識くんが違う人に見えた。
なんだか少し気まずく感じて、目を逸らす。

そのまま識くん達とすれ違おうとすると、


「…あ、雪音」



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