シュガートリック




すれ違う手前で横から声がかかって。
驚いてバッと識くんの方を見てしまう。


……え、今、私のこと呼んだよね……?

それに合わせて、一緒にいた女の子達も同時に私を見た。


識くんはそのまま私に手を振って横を通って。

……っ、え、手……っ?

識くんの柔らかい笑顔が向けられて、かああっと顔が赤くなってしまう。
……やばい、顔が……っ。


人がいる前で赤面なんてしたくないのに、私の意志とは関係なく顔に熱が溜まって。

私も識くん達も歩き続けているから、私が焦っている途中ですれ違ってしまった。


……あ、手振り返せなかった……大丈夫かな……。


「…あれ花染さんだよね?あんなはっきり近くで顔見たの初めて」

「すごい美少女じゃなかった?色気やばすぎ」

「識仲良くなったの?遊んでる感じ?」


後ろから盛り上がっている声が聞こえてきて。
肩がビクビクと反応しながらも、振り向かずにそのまま歩く。



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